椎間板ヘルニアは、背骨の間にある“椎間板”というクッションの役割をしているものが変形して飛び出し、周りの神経を圧迫することを指します。
原因としては、重いものを持つことで背骨に負荷がかかることが挙げられ、その他にも加齢や悪い姿勢なども発症に関わります。頚椎・胸椎・腰椎のどの部位でもヘルニアの発症リスクがあり、どこで発症したかで出てくる症状も変わります。
首、背中、腰などの強い痛みや手足の痺れ等を感じたら、鍼灸ではなく、まずは病院でしっかり調べていただくことを強くおすすめいたします。なぜなら、痛みや痺れが緊急性を要するものの可能性があるからです。
はじめに
こちらの症例は、当院が実際に施術した症例をご紹介しております。途中に専門用語や長い解説が入りますので、ご興味がある方はそのままお読みください。
簡潔にヘルニアについて、当院がどういう考えをもとに施術し、成果が出たのか知りたい方は『結果・後日』あたりからお読みいただければと思います。
※今回の症例を掲載するにあたって、患者様ご本人からの承諾を得て掲載しております。ご協力ありがとうございました。
施術までの流れ
当院の鍼灸治療は長野式を使用しています。 長野式とは?

新規の方は施術に入る前にまず問診表にご記入をお願いし、その情報をもとに、現病歴から既往歴、また生活習慣の中でどのような特徴があるのかをお伺いします。そして、脈診、腹診、肩や首、手などへ触診を行い、そこから見立てを立て治療方針を決めていきます。
大まかな流れは治療までの流れをご一読ください。
頚椎椎間板ヘルニアの症例
問診・触診・治療方針
- 患者情報:30代女性 職業…デスクワーク
- 主訴:頚椎椎間板ヘルニアでの首の痛み、痛みで座っていられない、可動域の制限(首が回しにくい)があり動かした後は眩暈がある、右手の腫れ
- 現病歴:元々首が弱く、痛くなることがあった。昨年の10月頃、首に痛みがあり寝違いかと思ったが痛みが引かず、首の可動域制限がある状態が続いた。1月に受診したところ椎間板ヘルニアと診断を受け、痛みと可動域制限が酷いため、休職を余儀なくなれた。また、痛みが酷いなら手術しかない、と言われたとのこと。最近では右手の腫れが気になり、箸が持ち辛い。37.5℃前後の微熱が続いている。ADHDの為、長いこと精神科に通っており、薬もいくつか服用している。
- 既往歴:出産時帝王切開
- 診察所見:脈診…沈んでいて、とても弱い 腹診…さまざまな箇所で圧痛あり その他…手足、肩、首等に複数圧痛あり
- 処置:上記の情報や所見から自然治癒力の阻害因子として、、、
慢性的な疲労
血行不良
慢性扁桃炎の可能性による免疫低下
おおまかに3つの阻害因子を見出し、血流改善、自然治癒力の改善、(免疫力の向上)、それによって炎症を抑えられる体にしていく、というのを主軸に治療方針を決めました。
施術内容
鍼を使う穴(ツボ)は痛みのある首だけでなく、治療方針に沿って必要な穴(ツボ)を使用するため、足や手、腰や背中にも鍼を使用します。
使用した穴(ツボ)
仰向け:足…築賓・陰陵泉・足三里
手…手三里、尺択
うつ伏せ:足…内陰谷
首〜腰、臀部:上髎・屈伸穴・大腸兪・T11・T1・大椎・首の後ろ
座りながら:帯脈
※難しい漢字ばかりで恐縮ですが、参考程度に記載いたします
・解説:今回の患者様は体がものすごく疲れてしまっている所見が見られたため、使用する穴(ツボ)を極力少なくし、一本一本を優しくていねいに刺激を入れていきました。実際、気になる所見や阻害因子はまだありますが、鍼を沢山使えば好転反応(体が良くなろうとする反応)が強く出てしまい、一時的に悪化したような状態になってしまうことがあります。患者様のことを第一に考え、この日の状態に合わせた、治療方針に沿った穴(ツボ)のみ鍼を使用しました。使用した鍼は5本で、使用した穴(ツボ)は14穴です。
結果・後日
施術後、痛みが寛解し、首の可動域が増えました。
次の日にも連絡をもらい、首の痛みが少なくなり、動きやすくなった、座っているのが辛くなかった。と喜びの連絡をいただきました。
考察
この方は頚椎椎間板ヘルニアの随伴症状である、痛みと可動域制限、手の腫れ、というのが主な症状でした。この方の様々な背景や所見から、慢性的な疲労、血行不良、慢性扁桃炎の可能性による免疫低下が自然治癒力の阻害因子であると見立てを立て、阻害因子を取り除く施術を実施した結果、痛みが寛解し可動域が広がることにつながったと思われます。
実際、臨床の現場でも椎間板ヘルニアがあるからといって、皆様痛み方や感じ方はさまざまで、椎間板ヘルニアがあるのに痛みを感じない方もいます。どうして同じヘルニアでも痛みの感じ方が違うのか。痛みがある方は『自然治癒力を阻害する因子』があり、その阻害因子が随伴症状を強くさせていると私は考えています。
※同じ椎間板ヘルニアでも、人によって痛みがひどくなる阻害因子は異なります。参考程度になさってください。
通う頻度、今後の治療について
主な症状が寛解しましたが、この方が求められていることは随伴症状を取り除くだけでなく『手術の回避』です。阻害因子である慢性的な疲労や慢性扁桃炎(の可能性)は、一回でどうにかなるような月日や年数ではないと思われます。そのため、実際にはまだ右手の腫れが気になるとのことですし、今回良くなった箇所も、今までの状態に戻りがちになります。
この方の場合は、手術をしたくないという目的も考慮し、週1回または2週間に1度のペースで通われることをおすすめします。また痛みの戻りが早い場合は、週2というのも検討して頂けたらと思います。
今後の治療は、その日の所見を元に阻害因子を見出して、その日のその人に合った治療方針を決めていきたいと思います。
まとめ
いかがでしたか?
今回は椎間板ヘルニアの症例のご紹介でした。
可能な限り、施術について言語化できるように勤めておりますが、何かご不明に思われた方はお気軽にお問い合わせください。
そして、椎間板ヘルニアでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。少しでもお手伝いができることがあると思います。
今後も他の症例の紹介を行なっていきますので、是非ご覧くださいね。
鍼灸師はお医者様ではありませんので、診断はいたしません(診断はできません)。あくまで所見から可能性があるとして見立てを立て、治療方針を決めております。始めにも記載しましたが、まずは病院にて一度診察をしていただいてからの鍼灸治療をおすすめします。
同業者の方へ:使用した穴を記載いたしましたが、参考程度になさってください。問診や触診、所見に対する見立てや選穴は流派によって異なりますので、誹謗中傷等はお断りさせていただきます。